A ご質問のケースについては、やはり、法人税基本通達によって恣意的な操作ができないようになっております。以下がその通達になります。「その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手する等」と一見すると、これが要件のようにも読めそうで、一年を超えればご質問のような経理ができるような錯覚を起こしそうですが、あくまで「等」と例示しているであって「当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるとき」は建物の契約価格があっても、取壊費用とともに当該土地の取得価額を構成するものと考えておく必要がありそうですね。
]]>(土地とともに取得した建物等の取壊費等)
7-3-6 法人が建物等の存する土地(借地権を含む。以下7-3-6において同じ。)を建物等とともに取得した場合又は自己の有する土地の上に存する借地人の建物等を取得した場合において、その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手する等、当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取壊しの時における帳簿価額及び取壊費用の合計額(廃材等の処分によって得た金額がある場合は、当該金額を控除した金額)は、当該土地の取得価額に算入する。
不動産の取得価額に参入しないことができる費用として以下の(基通7-3-3の2)において主に租税を中心に例示がされています。実は棚卸資産についても(基通5-1-1の2)において似たものが用意されています。(棚卸資産については例示とはなっておりません。)この点では不動産と棚卸資産は共通するところがあるようです。また、償却資産稼働前の利息については(基通7-3-1の2)で取得価額に算入しないことができる旨説明されています。
ここで注意したいのは「算入しないことができる」とゆう点です。通常決算が黒字の場合は取得価額に算入せず、費用計上する方を選択するのが税務上得策と考えられます。しかし、設備投資を行うケースが多い開業時など赤字決算も珍しくありません。その場合は税務上の繰越欠損金のことを考えて取得価額に算入することを選択することも考えられます。ただ、法人税だけに限らず、償却資産に係る固定資産税も検討項目として考えなければいけないケースもありますので、税理士さんとよく打ち合わせをしたうえで有利な方法を選択するようにしてくださいね。また、これ以外にも取得価額の決定についての取り扱いもありますので(別の稿で説明します)、やはり税理士さんに相談されるのがいいと思いますよ。
(固定資産の取得価額に算入しないことができる費用の例示)
7-3-3の2 次に掲げるような費用の額は、たとえ固定資産の取得に関連して支出するものであっても、これを固定資産の取得価額に算入しないことができる。(昭50年直法2-21「19」により追加、昭55年直法2-8「二十一」、平23年課法2-17「十四」により改正)
(1) 次に掲げるような租税公課等の額
イ 不動産取得税又は自動車取得税
ロ 特別土地保有税のうち土地の取得に対して課されるもの
ハ 新増設に係る事業所税
ニ 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用
(2) 建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用の額
(3) 一旦締結した固定資産の取得に関する契約を解除して他の固定資産を取得することとした場合に支出する違約金の額
(借入金の利子)
7-3-1の2 固定資産を取得するために借り入れた借入金の利子の額は、たとえ当該固定資産の使用開始前の期間に係るものであっても、これを当該固定資産の取得価額に算入しないことができるものとする。(昭55年直法2-8「二十一」により追加)
(注) 借入金の利子の額を建設中の固定資産に係る建設仮勘定に含めたときは、当該利子の額は固定資産の取得価額に算入されたことになる。
(棚卸資産の取得価額に算入しないことができる費用)
5-1-1の2 次に掲げるような費用の額は、たとえ棚卸資産の取得又は保有に関連して支出するものであっても、その取得価額に算入しないことができる。(昭55年直法2-15「五」、平5年課法2-1「四」、平15年課法2-7により改正)
(1) 不動産取得税の額
(2) 地価税の額
(3) 固定資産税及び都市計画税の額
(4) 特別土地保有税の額
(5) 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用の額
(6) 借入金の利子の額