労働保険といいますと、労災保険と雇用保険の二つをあわせて一般的には労働保険といいますが、その手続きは専門家である社会保険労務士さん(以下社労士)にお願いするのが一般的かと思います。しかし、この仕事のうちの比較的定型的な仕事を請け負ってくれる組織に「労働保険事務組合」があります。以下が労働保険事務組合の機能についての簡単な説明になります。
① 労働保険事務組合は、委託事業主の労働保険料の申告・納付、各種届け等を委託事業主に代わって、まとめて政府に行うことになります。
② 政府は、労働保険事務組合に委託した事業主の労働保険料に関する各種通知は、労働保険事務組合に対して行うことになります。
③ 労働保険事務組合は、委託事業主から労働保険料の交付を受けた場合は、これを政府に納付することが法律上義務付けられています。仮に、納付が滞った場合は、政府は、まず、労働保険事務組合に督促及び滞納処分を行い、残余の額がある場合に限り、委託事業主から徴収することができることとされています。
① について具体的に労働保険事務組合が処理できる労働保険事務の範囲はおおむね次のとおりです。
(1) 概算保険料、確定保険料などの申告及び納付に関する事務 (2) 保険関係成立届、任意加入の申請、雇用保険の事業所設置届の提出等に関する事務 (3) 労災保険の特別加入の申請等に関する事務(4) 雇用保険の被保険者に関する届出等の事務 (5) その他労働保険についての申請、届出、報告に関する事務 。とゆうことになります。
ここで気を付けたいのは、印紙保険料に関する事務並びに労災保険及び雇用保険の保険給付に関する請求等の事務は、労働保険事務組合が行うことのできる事務から除かれています。
つまり、保険給付の請求は事務組合は行っておりませんので、今まで通り社労士さんにお願いするのが無難かと思います。また、給与計算をしてくれるわけではないので、労働保険の申告のもとになる、保険料の対象になる月々の給与等の集計はやはり社労士さんにお願いすることになるでしょう。
ここで、労働保険事務組合に事務委託できる事業者さんの要件をみてみましょう。
要件は、常時使用する労働者が①金融・保険・不動産・小売業にあっては50人以下 ②卸売の事業・サービス業にあっては100人以下 ③その他の事業にあっては300人以下 の事業主さんです。つまり、いわゆる中小事業者さんといわれている事業者さんはほぼ加入することが可能であると言えるのではないでしょうか。
では、具体的に加入のメリットについて考えていきましょう。
(1)労働保険料の申告・納付等の労働保険事務を事業主に代わって処理しますので、事務の手間が省けます。(2)労働保険料の額にかかわらず、労働保険料を3回に分割納付できます。 (3) 労災保険に加入することができない事業主や家族従事者なども、労災保険に特別加入することができます。
(1)については既に申し上げたとおりです。(2)については資金繰りがもし厳しいときなどはありがたいですね。そして特に言われるのが(3)の特別加入制度です。労災保険は原則事業主等は加入できません。しかし、労働保険事務組合に加入することによって事業主も労災保険に任意に加入(特別加入といいます)することができます。この制度のために労働保険事務組合に事務委託を希望する事業主さんもおられるぐらいです。
労働保険事務組合のメリット以外にデメリットもあることもあります。上記③のように万一事務組合が破綻などとゆうことがあれば最悪一度支払った労働保険を再度納付とゆう可能性が「ゼロ」とゆうわけではありません。
この制度を活用する際にも、日頃お願いしている社会保険労務士さんに相談してみるのがいいと思いますよ~。