一般的に社会保険と言われるものがあります。これは雇用主が法人の場合又は一定の個人事業主が加入を強制されている健康保険及び厚生年金保険のことをいい、併せて社会保険とゆうことがあります。
この健康保険の保険料及び厚生年金保険の保険料は従業員の給与の額をもとに算定され、算定された保険料を労使折半で負担することとされています。しかし、この折半負担は健康保険料の場合、これは全国健康保険協会が保険の管掌(つまり運営)を行っている、いわゆる「協会けんぽ」の場合をいいます。もし保険の管掌を行っているのが健康保険組合(いわゆる「組合けんぽ」とよばれているもの)である場合はその組合の規約等で負担率を設定することができます。(実際に平成年度初期の時期は法人負担を従業員負担より多くする健康保険組合はあったように聞きますが、現在はあまり少なくなったように聞いております)
ここで、従業員が負担すべき金額(協会けんぽの場合は半額、組合けんぽの場合は規約で定められた率を乗じた額)を法人等雇用主が負担した場合の取り扱いです。
例えば一ヶ月の健康保険料が20,000円(ここでは厚生年金保険料は度外視します。)とすると「協会けんぽ」の場合労使10,000円ずつ負担しておれば、源泉所得税の経済的利益等は発生しません。また、「組合けんぽ」で事業主の負担割合が規約で3/4(75%)とされておれば事業主が15,000円、従業員が5,000円負担すれば、これも源泉所得税の経済的利益等は発生しません。
そこで、もし、事業主が20,000円をすべて負担していた場合はどうなるのでしょうか?
本来従業員が負担すべき金額、「協会けんぽ」の場合は10,000円、「組合けんぽ」の場合は5,000円を経済的利益つまり給与収入として従業員の収入に加算されることとなります。
従業員にとって保険料を負担してもらった分、税金の負担も増えたように一見するとみえます。
しかし、よく考えてみましょう。負担してもらった保険料を従業員は給与相当として雇用主からもらって、その分を社会保険料として納付しているのです。もらった保険料相当額は給与課税され、同額が社会保険料控除の対象として税額計算上控除されるのです。税額計算上収支トントンにみえます。いえ課税される給与収入相当は給与所得控除が適用されますので、僅かですが控除の方が多くなり所得課税計算上、ほとんどの場合マイナスとなるのです。なんか、トリックのように見えますね。
これは、国民健康保険組合(例えば医師国保や税理士国保等)の保険料を事業主が一部負担している場合にも注意が必要です。これらの保険に従業員が加入している場合は事業主は負担割合は定められていません。事業主が保険料の一部負担をする義務は無いとゆうことになりますが、負担するケースはよくあります。
ここでは、例えば保険料が20,000円として事業主が12,000円負担する場合は12,000円の保険手当として給与加算し、控除項目として20,000円を給与から控除します。(社会保険料控除の対象は20,000円です)
そこで、もし、保険手当として支給せず、本人の実質負担額8,000円を控除項目として控除するに留まった場合どのような課税関係になるのでしょうか?
前者を原則として、後者を例外と考えた場合、後者が不当とは考えられないと思います。12,000円は給与収入として加算されないとすると、社会保険料控除は8,000円となります。実際に課税対象となる課税所得は若干ですが後者の方が多くなります。
実際後者の場合は課税対象収入は少なくなりますので、昨今のパートタイム労働者である主婦の方にとっては、103万や130万の壁が気になる方もおられるので参考にはなるかもしれません。
もし、事業所の全ての方が保険手当方式にも関わらず、一人だけ実質負担額方式を採用していれば不当と考えられるかもしれませんが、全員が実質負担額方式であれば正当であると考えられるのではないでしょうか。
しかし、実際の経理処理等を採用する場合は関係省庁の了解をとったうえで、税理士さん等に相談されるのがいいと思いますね。