Q、当社は建築請負業ですが、先日、税務署の調査を受け「未成工事支出金の一部について消費税の仕入税額控除を認めない」との指摘を受けました。当初なんのことかさっぱり分からず、よく聞けば、支出した建設原価のうち未完成工事に係る経費(未成工事支出金として計上した原価)の一部が消費税の仕入控除として認められないとのことでした。建設業の未成工事支出金といえば、卸売業や小売業では棚卸商品にあたると思いますので、仕入れた商品はたとえ売れ残っていても、すべてが仕入税額控除することができるはずです。棚卸相当額が否認されるなんて聞いたことがなかったのです(課税事業者でなくなった場合の棚卸資産に係る消費税等の調整を除く)。こんなことってあるのでしょうか
A、未成工事支出金の消費税の取り扱いについては、消費税基本通達に該当するものがありますのでみてみましょう。
未成工事支出金
11-3-5 事業者が、建設工事等に係る目的物の完成前に行った当該建設工事等のための課税仕入れ等の金額について未成工事支出金として経理した場合においても、当該課税仕入れ等については、その課税仕入れ等をした日の属する課税期間において法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》の規定が適用されるのであるが、当該未成工事支出金として経理した課税仕入れ等につき、当該目的物の引渡しをした日の属する課税期間における課税仕入れ等としているときは、継続適用を条件として、これを認める。
なかなか、言われている意味が分かりにくいですね~。最後に「~これを認める。」と書いてあると、仕入税額控除いける規定では?とか思っちゃいますね~。
しかし、この通達の意図するところですが、前半の「~法第30条の規定が適用されるのであるが、」までの説明は、未成工事支出金にかかる費用の仕入税額控除は課税資産の譲渡等(今回の場合、例えば下請業者から請負工事が完了し引き渡しが完了)があったときにできますということをいっております。例えば未成工事支出金として外注費を支出していても、工事全体が未完成で外注先も未だ継続して受注中で発注した法人等(当社)に引き渡しが完了していなければ、一部支払いがあっても、それは例えば中間払い金的な仮払金のようなもので、未だ役務の提供が完了しておらず、仕入税額控除は時期尚早であるといっているのです。外注先に対して未だ受注継続中であり一部部分完成しており引き渡しが一部完了しているものがあっても、これらが混在している場合に、すべて工事全体が完了した時で、途中決算時に引き渡し完了及び未完了分を、まとめて最後の完成時に仕入税額控除をしてもいいですよという仕入税額控除の繰り延べ(次年度に後送り)を認めているのが、その後の説明になります。
未成工事支出金に係る消費税は税務調査では絶対検討項目になるといっても過言ではありません。工事台帳に集計された原価が引き渡し完了のものか?そうでないのか?調査官は出面(でずら)帳や請求書等まで遡って検討される場合もあります。もちろん原価の集計漏れがあればそれ以前の問題になります。判断に困った場合に税理士さんに聞くのも一つの方法ですし、自信の無い場合は不利にはなりますが仕入税額控除の繰り延べを利用するのも一つの方法といえるかもしれません。